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 今年の正月、関興は珍しく勤勉だった。
 そう聞けば、江陵の民は疑問に思うあろう。いやいや、関興様はいつでもきびきびとなさっているではございませんかと。
 そしてそう聞けば、彼の兄は怒りを感じるであろう。二弟め、外面ばかりますますよくなってと。
 関興は本質的に怠け者である。彼は一を聞いて十を知る頭脳と、一の努力で十をなす才覚とを持っていた。効率至上主義に陥るのも無理はないことだ。
 かつては思い人である兄の前ではいい子ぶっていたものだが、えてして両想いとなると緊張の糸は切れ、でれでれと甘えだけが強く出るものだ。
 しかしならが、そう、今年の正月は例外的に勤勉な彼だった。
 晴れ着を一部の隙もなく着こなし、その姿はまさに凛然。そして初日の出が昇る前から立ち働いた。苦手な父への年始挨拶も早々に済まし。昼下がりにはすることがなくなるほどに。
 そしてそれは、結果ではなく目的であった。

「ふう、やっと落ち着いたな」
 関興がその目的の元に、自室に炉をたいて部屋をあたためくつろいでいると、兄もほどなくしてやってきて、一息ついてお茶をすすった。
 弟違って芯から勤勉な彼は、正月というこの年間最大行事を完璧にこなさなければ一年を安心して過ごせないたちにあった。
「遅くなってしまったが、明けましておめでとう、興」
 その重責を果たし終え、肩の荷をおろして、感心な弟にほほえみかける。
 笑顔が怒りに変わるのはほんのしばらくのちであった。

「お前。この体勢はどういうつもりなのだ」
「え? いやあ」
 のしかかり、すでに服を脱ぎ始めている弟を、どうしてかいつのまにか仰向けで見上げる羽目になっている関平は低い声色で脅しつけようとしたのだが、効き目はない模様。
「いやその、」
 一応は言葉を選ぼうとしたようだが、心がうきうきして頭が働かないため、結局思ったまま口にした。
「姫初めをと、思いまして」
「最初から、こういう魂胆だったのだな。妙に腰が軽いと思えば」
「それはもう、腰も軽くなります」
 関平はこういう下世話な冗談が大嫌いである。正確に言えば、この、かわいくかつかしこく、かつもって完璧な貴公子であるはずの弟が、このような冗談を言うのが我慢しがたいのだった。
 大事な大事な弟でなければ、股間を蹴り上げて退けてやりたいところだ。ついでにその口をぬいつけてやろうか。
 一方関興にしてみれば、満願かなって兄と恋仲になったはいいが、堅物の兄が、きちんと日が暮れ、きちんと布団に入らねばすることも容易にさせてくれないことが最近の不満であり、元旦のめでたい空気を利用してうまいことやってやろうと、そのようにたくらんだのであった。
「しかし兄上、」
 関興は、隠し持っていたもう一つの目標を達成したことで、そこで含み笑いを含みきれなくなって、くくと笑った。
「兄上が姫初めという単語をご存じとは」
「お前という奴は!」
 我慢が切れて関平は弟にびんたをくれてやると、逆手を取って抑え込み、ごめんなさいと言って謝るまで許してやらなかった。
 そして関興はあわれにも、それから松が明けるまで指一本として兄に触れさせてもらえなかったのだった。


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