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「散開!」
華容道の裏道で、関羽のその号令に抗議しようとしてやめたのは父に逆らえないがためではなかった。
その瞬間自分が考えたことを思うと関平は今でも身の毛がよだつのだった。
命令に従って魏の軍勢に道を開けながら、手綱を握る手が震えた。
槍を一なぎしてやれば賊の首領の首を取ってやれる距離だった。
たとえ父の怒りに触れて自分は罰を受けようとも、それで父の名誉は守れるはずだったのに、そうできなかった。いや、しなかった。
瞬時に思って手が動かなかった。
──今そんな重大な造反を犯せば、父上は今度こそ私を勘当するに違いない。
と。
そしてあまつさえ思ったのだった。
──自分を思いやってもくれない父のために、なぜそんな奉公をするのだ。
我に返った時には既に遅かった。そして関平は自分が恐ろしくなった。
たとえ気の迷いでもそんなことを考えた自分に愕然とした。
なんと利己的で、なんと愚かなことか。
飛び抜けた才覚はなくとも、世の人に恥じるような人間でだけはなかったはずではないのか。
父を深く慕うに従って、自分はますます父に思いを返される価値がなくなっていく。
しかも、とっさに浮かんだその考えこそが自分の本性なのだろうと思えば、いよいよ絶望はつのるのだった。
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