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 薬の効き目を寸分もむだにはすまいという父の心意気により、関平は宵のうちから父の部屋に呼び寄せられ、待機させられていた。
 関平はむくれ、しかし、きて欲しくはないその時がやってきてしまうのを無力に待つより他にすることもなく、不満はいよいよ鬱積した。
「なんだ、その顔は。暇ならこちらにきて酌でもせんか。一晩楽しく過ごそうというのに、愛想が悪い」
「父上の機転のおかげさまで私はご覧の通り既にすっかりやつれてしまいましたから、もはや無理に運動する必要もないのです」
「そう申しても今更とめることもできまいに、今になって言ってどうする。そうまで嫌ならば、のどに指を突っ込んででも吐き出せばよかったろうよ」
 そう言われて、関平はそっぽを向いた。
 彼もそう思いはしたのだが、実際のところ、気づいたのは飲み込んでしまって三日もたったころだったのでもはやどうにもならなかったのだった。
 世間並みと比べて頭が悪いとは思わないのだが、父に対抗するには奸智が決定的に不足している。しかし父と張り合うだけのずる賢さを身につけたいとも思わない。かといって、いつでも父の言うなりでいるのも度し難い。どうにかして父に一矢報いたいところなのだが。
「あがいてもどうにもならんのだから、理屈を言わず満喫したらどうだ」
「なんと情の薄いおっしゃりようか。このような方が私の一生の人とは、大層情けない思いです!」
 また面倒なことを言い出した、といった風情で父がうっとうしそうに自分を見るので、関平はますます腹を立てた。
「いつだって私は父上の望むままにいたしているではありませんか。お相手を嫌がったこともございませんのにこのような怪しげな薬など持ち出して、私にご不満なのですか。至らないところがあるのでしたらはっきりそうおっしゃったらよろしいではないですか」
 そこまで言うと、手の平に顔を埋めてさめざめと泣き出した。
「白々しいまねはやめんか」
 見破られ、聞こえよがしに舌打ちする。
「お前、随分とよい態度だな。この件に関して一連どうも反抗的だな。なにが気に食わん」
「なにをとおっしゃられても、なにもかも気に入りませぬ」
 恨みを込めて上目使いに父をにらむ。
「嘘泣きはいささかやりすぎでしたが、不愉快は本心です。こんなことはおもしろがって薬の力など借りていたすべきではございませぬ。自然と体が求める分だけすればそれで十分ではないですか。どうしてもなさりたいのであれば、しかるべき場所に出向かれて、しかるべきお手当てをお支払いになって、どこぞのどなたにでも相手していただいたらよろしいではありませんか」
「おい」
「素直が取り柄と父上がおっしゃるので心のままに申し上げますが、こんなことをして楽しむなど、私は好きになれないのです。嫌なのですよ!」
 そして父に背を向けてしまった。
 言いたいまま投げつけてしまって父はさぞ怒ったろうが、関平にしてみれば、父のやることはできる限り許容したいと思っている彼をしてさえ、こうしたことで悪ふざけをされるのだけは許しがたかった。
 怒鳴りつけられてもいいように関平が歯をかんで覚悟を固めていると、背後にいざり寄った父が、奇妙なほど優しく腕をまわしてきた。
「えっ、あの」
「お前はなにも分かっておらん。父はお前に飲ませたかったのだ。言われずとも悟らんか」
「ち…ちうえ」
 うろたえたまま父を見ると、その目は優しく光り、笑んだ。
 その光に当てられると、関平はすっかり体に力が入らなくなり、それでいて体の芯がかっと熱くなって、へなへなと父の腕にもたれた。
 無闇に顔がほてり、自分が今どんな顔をしているかと思えば、たまらなく恥ずかしくなる。
「あ。薬が効いてきたようです。なんだか急に、暑くなって参りました」
「薬のせいでなどなかろう。お前の言う通りだ。父とお前の間に薬などいらぬ」
 陶然として関平はうなずき、父にすり寄って大人しく体を預けると、ちょうどその時城内の鐘が二更を告げた。
──きっかり七日とは。この薬、たいしたものよ。
 すべて始めから計算ずくの父だった。

 腕の中に抱いたまま、一枚一枚つぼみの花弁をはがすように、まどろっこしいほど丁寧に関羽は息子の衣服を解いた。
 時間をたっぷりかけて父がそうしていく間、関平は心臓が破れそうな動悸で身じろぎもできない。
 肌着だけを残すとそこで関羽は手を止め、息子の手を自分のあわせに引いた。
 脱がせろというのだろう。
 促されるままに、襟元の飾り結びを解こうと手を伸ばすが、高ぶりに指が震えて思うに任せない。
 そこで、胸元に顔を寄せて、紐をくわえて引いた。
「なかなか気のきいたまねをする」
「…。父上…」
「なんだ」
「もし私が今夜おかしなまねをしてしまっても、それは薬のせいです」
「ふん」
「血が煮えそうです。目が回って倒れそうです。すべて薬のせいなのです」
「それはいい。父も薬が効きすぎたようだ。なにをするか分からん」
 するとやおら関羽は息子の肩をつかむと、後ろ手に逆手を取って布団に押しつけた。
「あ、なにをなさいます」
「父にも分からんと言ったろう」
 普段の言動に比べれば閨の嗜好は意外なほど正常な関羽は、力に任せるまねはめったしない。
 しかしことこの息子に対するにはそれも道理で、どうせ難なく従わせられると分かっている者に無理強いをする必要はないからだ。羽を切ってある雀にさらに紐をつけて飼うようなものだ。
 ところが珍しくも、抵抗を抑え込んだまま伸し掛かって、背中の上に体を伏せ、耳をかんだ。
「たまにはお前のいいようにしてやるのもよい。こうされるのが嫌いではないだろう。いささか手荒にされる方が、いいのだろうが」
 関平は恥じ入って答えなかったが、唇をかんで目をそらしたのが明白な回答だった。
 荒々しく組み伏せられ、甘い期待に関平は熱い息を吐いた。
「まあ、みなまで申すことはない」
 関羽は押さえつけたまま、空いている手を息子の口元にかざしてなめるよう促した。
 関平は強制されるまでもなく、夢中でその太い指をなめしゃぶる。
 とめなければいつまでもそうしていようとする口から取り上げ、未練深そうな気配を見せるのを鼻で笑ってから、陰部に滑り込ませた。
「ん…っ、うう…」
「ゆるんでおるな。慣らすまでもない」
 押さえ込んだまま腰だけ引き上げさせると、すでに十分に固くなっている己のものを押し込んだ。
「あッ、あああ…ッ!」
「ふう」
「く…、あ…つい。熱いです、父上」
「お前も、熱いな。悪くない」
 ほめ言葉に不自由な関羽にしてみれば、悪くないとは手放しの称賛と言っていい。
「うっ、うっ」
 荒れ狂う快感に関平が身をよじりせり上がろうとするのを押さえつけて許さず、激しく関羽は抽送する。
「あ…あ。いい、いい…。んっ、うう…っ」
 父が容赦なく責め立てるので、そこで関平は息を詰め、一人だけ気をやってしまった。
「はあ、はあ。うう…」
「父はまだ終わっていないのだぞ。仕方のない奴だ。どれ、締めてみろ。できるだろうが」
「で、できませぬ。ああ…。できませぬ」
 それどころではない。
 関羽はじれて、息子の前を手加減なしに強く握った。
「ああッ!」
「ふ…。なかなか、よかったぞ。させられる前に、して見せればよいものを」
「う…、く」
 そのまま立て続けに大きく揺さぶられ、一体いつ終わったのか、関平にはついぞ分からなかった。

 頬をぴたぴたと叩かれ、嫌々関平は重いまぶたを持ち上げた。
「気絶している暇はないぞ」
「か、体に力が入りませぬ。頭もくらくらといたしますし」
「手のかかる」
 そう言って手を引き起き上がらせると、胡坐をかいた上に背から抱いて座らせた。
「あ…く」
 もちろんそこには父の抜き身の剣が待ち受けている。
 関平が腰を下ろし切ると、先ほどとは違い、今度はごくゆっくりとゆすってやる。
「ん…、ああ。気持ちが、いいです。うう…」
「それはなによりだな」
「あ…」
 息子が体をこわばらせ、背をそらせるのを見て、その色味のある光景をしかし関羽は喜ばない。
「またいくのか。朝まで持たんぞ」
「そ、そうおっしゃられましても。ん…」
「そうして我慢していろ」
 息子の手をつかんで自身の根元をきつく握らせた。
「あ、あ…! ご堪忍下さい」
 泣きを入れてもしかし、上から握り込んで許さない。
 そうしながら、もう一方の手をまわして後ろからあごをつかみ首をよじらせ、首筋をあらわにさせてそこをなめ、甘かみした。
 そこが息子の弱点だとはもちろん重々知っている関羽は、だからこそめったにその場所は責めてやらないのだが、今はよほど上機嫌だということだ。
 残念ながら関平には今のところそれを喜ぶ余裕はない。
「あっ、あっ、ああ、ああ…!」
 関羽は次第に速度を上げて腰を使い、関平が苦しげに声をあげ身をよじってもお構いなく続けると、いましめた手をゆるめてやらないまま、その中に開放した。
「ふう」
「うう…。あ、あんまりではないですか父上。ご自分ばかり」
「お前がこらえ性がないのが悪いのだ。先にへたばられたのではかなわんからな」
「父上につき合うなど無理なこと。では、こういたします」
 言うが早いか、父の股間に顔を伏せた。
 もう既に二度放出してもしずまるどころか常にも増してかさの張っているそれをなめしゃぶり始めた。
「うむ」
 舌を出して飴をなめるようになめ上げ、または口の中に含んで吸い、慣れた仕草でそこに奉仕した。
「ん、く…」
 最後になっても放さず口で受け止めると、粘りつくその液体を手の平に出して色具合を見てから手拭でぬぐった。
「まだまだお元気のようです」
「無論だ」
「ですがこれで、次は意地悪をなさいませんね?」
 そう言うと、父の両肩を引いて引き倒した。父の腰に脚をからめ、色を込めた目で上目使いに見た。
「まあ、よかろう」
 さすがに薬の効き目も落ち着いてきた折、次は呼応して楽しもうというのか、関羽はじっくりと息子の肌をなでる。
「ふ…う」
 関平は喜んで体を預けたが、父は如才なく息子の胴回りを測っていた。
──およそ、元通りというところか。こちらはどうだ。
 肉づきの一番顕著だった内股をなで回した。
「父上、お戯れを」
 関平は父の悪ふざけを受けて、体を入れ替え父に乗り上がって口づけた。その重みを関羽は確かめる。
「大方以前と変わりなくなったようだが、お前、目方は今いくらほどある」
「なんですと? 嫌なことをおっしゃいますな。こんな時に」
「父はお前の体を案じているのだ」
「ご自分の都合ばかりでしょう。私の体格が変われば夜相手をさせるのに支障があるからではないのですか」
 薬がさめるに従って冷静な思考回路が戻ってきた関平は再び反抗的だった。
「お前はまだ分かっておらんのか。なにもかも言葉にして言ってやらねばならんのか」
 そう言って息子の手を取ると、熱く脈打つところを確かめさせるように己のものに手を触れさせた。
「な、なんなのですか」
「お前をかわいいと思えばこそ、父はこのように猛っているのではないか。父を疑うのか。長年そばに添い、毎晩のように同じ床に伏してさえ、お前は父が信じられんのか」
「いえ、そんな」
 関平が返答に詰まったところで、父は情感を込めてその口をふさいだ。
 柔らかく、次第に深く舌を吸い、関平がうっとりとしてしまうまで続ける。
「もう、分かったろう」
「ああ、父上。父上のお心を疑うなど、私が愚かでした」
 どれほどよくできた薬よりまだ効能の冴える薬に麻痺してしまい、関平は骨が抜けたようになった。
 薬であればいつしか体が慣れることもあるだろうが、この同じ手を食うのは何度目であろうが効果が鈍ることはないようだ。

 明け方も近くなり、いよいよ疲れ果てて関平がうつぶしていると父が布団をかけてきた。
「朝までいくらか休むがいい」
「はい、父上」
 父の優しい言葉に関平は従順に目を閉じたが、それは単に、一夜をほとんど費やした奉仕の後でも明日の欠勤は許さないと言っているのだなどとは彼は考えてもみない。

 またしてもだまされ、数日間は父の愛を信じた関平だが、今ではやはり九分九厘、自分を使って薬の効き目を試したかっただけだったと思っている。
 あの薬を調達してきたのは廖化の部下らしいのだが、あの翌日父はひそかに廖化を呼びつけて、薬を売った商人の首に縄をつけてでも引っ張ってこい、ありったけ薬を持ってこさせろと言いつけたらしい。
 しかし昨今では関平も悟りの境地に近づき、信じることが幸せであると、あきらめ気味に思うのだった。


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