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 関羽は久し振りに爽快に目を覚ました。頭痛もしないしだるさもない。完全に本調子、晴れやかな気分だ。ところが。
──なんだ、あいつは。
 見れば息子が背を丸めて炭などいじってるのでさわやかな気分は急激に台なしになった。
 こちらに背を向けているのをいいことにその後ろに忍び寄ると、後ろ襟をつかんで引っ立たせた。
「くっ、苦しい!」
 合わせがちょうど首を締めたので、関平はむせて咳き込んだ。
「こっ殺す気ですか、父上」
 ぜいぜい言う関平を関羽は冷ややかに見た。
「ぼんやりしおって、なにをしている。武人のくせに姿勢が悪いぞ、辛気臭い奴め。お前の方が病人のようだ。若さがない。父など昨日まで寝付いていたとは思えんほど気が充実しておる」
 たたみ掛けるように言うその言葉はあまりに非情というものだ。父が寝込んでいる間、関平は平常勤務に加えて父の代わりに決裁をし閣議を仕切り、父の看病までしてほとんど寝ていない。そこへ精神的な疲労も加わって、風邪こそ引かなかったものの半病人のようなものだ。
「お前が仕事をためたろうから今朝は早く出るぞ。すぐ支度しろ、ぐずぐずするな。そら、早く上着を寄越さんか。父の風邪がぶり返したらどうする。赤兎は門前まで寄せておけよ。なにぶん、父は病み上がりなのだからな!」
 一方的にまくし立てると関羽は威勢よく部屋を出て行った。
 廊下を少し行ってさらに叫ぶ。
「とっととこい! 平!」
 父に対応できず、まだ呆然としてしばしへたり込んだままでいた関平は、城中が飛び起きるような声で怒鳴る父にようやく我を取り戻し、怒りに震えた。
──分かりました。よく分かりましたとも。
 父の心配などしたのは間違いだった。心細い疲れた夜が起こさせた気の迷いだ。
 見ろあの人を。自分などよりよほど長生きしそうではないか。天の神様だって、あんな人を手元に呼び寄せるのはごめんこうむるに違いない。こじらせていた風邪が今朝になって突然直ったのも、間違った宿主に取りついてしまったことに風邪の方で気がついて慌てて出て行ったのだ。きっとそうだ。
 気苦労で自分が若死にしてしまった後も、父はいつまでもあの調子でいるのだ。予感のわけもこれで判然とするというものだ。
──むだなもの思いに夜を費やしてしまった。金輪際、父上の心配などするのはやめよう。むしろ自分をいとわねば。
 息子を励ますつもりなどはかけらもなかった父の一喝で関平は元気を取り戻し、憤然とし肩を張って立ち上がった。結局、上向きにしろ下向きにしろ関平の気分を曲げることができるのは主に父である。
 そして始まってみればなんのことはない、いつもどおりの朝であった。


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