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 3匹のこぶたは仲良し兄弟。毎日おててをつないで森へお散歩に行きます。
 いちばんお兄ちゃんのこぶたは平といいます。平は2匹の弟たちをとてもとてもかわいがり、大切にしています。今日も平は弟たちのためにたくさん木の実を拾ってやりました。
「興、索。おまえたち、どれでも好きな実をお食べ。ほら、こんなすてきな赤い実はどうだ」
「わー、きれい。それにとってもおいしそう!平にい、ありがとう」
「うんうん。興、おまえはどれがいい?」
「えー、おれ、トリュフがいい…」
 平にいの耳に届く前に、平にいには見えぬ角度で、索が興の向こう脛を蹴り飛ばしました。
「シッ…ほんとに興にいは気が利かない。平にいをがっかりさせるおつもりか」
「す、すまん」
 この、兄はおろか弟にも頭の上がらぬこぶたが3兄弟の真ん中 興でした。もちろん興も平にいのことが大好きで、その大好きっぷりと言えば兄弟の情を踏み越える一歩手前のヤバイところにまでイってしまっておりましたが、なにぶん考えを腹に仕舞っておけぬ性質で索に叱られることもしばしばです。

「平にい、索は平にいと一緒にお花畑に行きたいな~」
「よしよし、平にいが連れていってやろう」
 うふふ、と笑いながらちゃっかり兄の腕に自分のそれを絡めたのが、3兄弟の末っ子 索。
 彼も興に負けず劣らず平にいを愛しています。それはもう、すぐにでもペロッとパクッと食べてしまいたいぐらい。しかし兄たちよりも多少賢く要領よく生まれついたこの末の弟は、興にいと牽制しあいながら平にいに甘やかされる毎日をそれなりに楽しんでおりました。

 さて、そんなこぶたたちが森から帰ってくると、父が言いました。
「おまえたちもそろそろ独り立ちする年頃だ。3人それぞれ自分の住む場所を探し、家を作りなさい」
 さらに父は付け加えます。
「いや、なに、平は気が進まぬのならば無理に出てゆくことはない。父と共にずっとこの家におればよい」
 父のよこしまな思惑にはみじんも気付かず平は言いました。
「いいえ、父上!弟たちが独り立ちをするというのに、わたくしだけがいつまでも父上のもとに置いていただくわけには参りません。平もきっときっと立派なお家を作ってご覧にいれます!」
 目をキラキラさせてそう言う平の様子と、下の息子たちの冷ややかな視線に、父はそれ以上何も言わずに3匹を送り出しました。
 そんなこんなで突然自分の住みかをこしらえなければならなくなった3匹は、思い思い気の向く方へと歩いて行ったのでした。



「オッ、こんなところに苅藁の山が。こいつをちょいと拝借することにしよう」
 麦畑で立ち止まったのは3兄弟の真ん中のこぶた 興でした。
 そもそも彼はかりそめの小屋しか作る気がありませんでした。最初から一日か二日なんとかしのいで、あとは平にいのところに転がり込む予定なのです。
「平にい、興は平にいなしではやってゆけませ~ん!なんて泣きつけば平にいはイチコロだ。そしたらそこから平にいとおれ、二人っきりの甘~い同棲生活…!ムフ、ムフフ」
 妄想が声になってよだれと共に垂れ流しになっていることにも気付かず、興はせっせと苅藁を積み上げ始めたのでした。



 索がふらりとやってきたのは、毎日平にい(と興にい)と一緒にお散歩した森でした。
 思慮深い彼は、
(あの父のことだから必ず一度は視察に来るに違いない)
と踏んでいました。
(いい加減なものは作れない。せめて外見だけでもそこそこに仕上げよう)
 さらに彼は考えます。
(平にいはああみえて頼りない。そうだ、わたしは二人で住める広さのすてきなお家を作って、平にいをお迎えに上がろう。うん、それがいい)
 そうして索は森の小枝を拾い始めたのでした。



 平はと言うと、森のはずれの小川のほとりで途方にくれておりました。
(どうしよう。父上にはああ言ったが、わたしは弟たちのように要領も良くなければ賢くもないし、力もそれほど強くない…。そ、そうだ、父上は森には悪いオオカミがいるとおっしゃっていた。わたしのはオオカミがやってきても隠れられるような頑丈なお家を建てよう)
 平は苅藁と土をよく練って形をととのえると、森の小枝を集めてそれを焼き固め、レンガのお家を作り始めたのでした。



 さてさて幾日か経った頃。
「地方自治体負担による耐震基準検査です」
などと二匹のきつねがやって来ました。
「耐震検査??」
 苅藁のお家から顔を覗かせた興は、羽扇をヒラヒラさせているきつねの胡散臭さに顔をしかめました。
「そのようなもの、頼んだ覚えはない。我が家には必要ない故お引き取り願おう」
「そなたの父上から耐震基準検査の依頼を受けて参ったのだ。問答無用!姜維、やっておしまい!」
「ハイっ、丞相!!」
 もう一匹のきつねは元気よくそう答えるとスゥっと息を吸い込み、そうして
ふぅぅうぅっっ
 物凄い勢いで空気を吐き出しました。
「うぁーっ!!」
 あわれ、興のお家は吹き飛ばされてしまったのでした。



「地方自治体負担による耐震基準検査です」
 二匹のきつねは索のところにもやってきました。
「…父上の差し金か。よかろう。検査でも審査でも存分にするがよい」
 索はすぐにきつねたちの正体を見抜きましたが、それでも鷹揚に頷いてやりました。
(きつね風情にどうこうされて困るような安普請には作っておらぬ。わたしと平にいの未来のスィートホームはわたしの自信作なのだからな!)
 姜維というきつねはまたスゥ、と息を吸い込むと
ふぅぅうぅっっ
と力いっぱい空気を吐き出しました。
 ゴウッとすごい音はしましたが、さすがに木のお家はなんともありません。
 ふっふっふ、索は一人不敵に笑いました。
「どうだ、たいしたものだろう、わたしの家は。きつねども、帰って父上に伝えるがよい。兄上はわたしのところに来ていただくとな」
「なに。小癪なこぶたよ。姜維、お下がりなさい」
「ハイっ、丞相!!」
 きつねはご自慢の発明品 木牛に乗り込むと助走をつけて
ドッカーン!
 体当たりをかまし、索の作った木のお家をぶち壊してしまったのでした。



「どれどれ、おまえの作った家を見せてみろ」
 平のところにやってきたのは二匹のきつねではなく、お父さんぶたの関羽でした。
「父上!ようこそおいでくだされました。どうぞ、どうぞこちらへ!」
 平は喜んで父を部屋へと招き入れました。
 お父さんぶた 関羽は言いました。
「ふむ。なかなか頑丈そうなよい家ではないか」
 そうして自分が入ってきた扉に、がちゃん、と錠をかけました。
「ふむ。これで邪魔が入ることもあるまい」
「邪魔?邪魔とは?」
「いやなに、悪いおおかみのことだ。父はおまえが悪いおおかみに襲われはせぬかと心配しておるのだ」
 なるほど、さすが父上はお優しい!と平は感心しましたが、実はこの森には悪いおおかみなどおりません。平が、お父さんぶたの関羽が言ったことを一つも疑わずに信じているだけです。
 お父さんぶたはさらにレンガでできた厚い壁を叩いて言いました。
「ふむ。なるほどしっかりした壁だな。これならば声が漏れることもあるまい」
「声…ですか?」
「いやなに、父はおまえがおおかみの遠吠えに怯えはせぬかと心配しておるのだ」
 またも平はさすが父上、お優しい!と感心しました。
 最後にお父さんぶた 関羽は窓にかかったカーテンをみんなみんなすっかり閉めてしまうと言いました。
「ふむ。これで準備も調ったというものだ。ときに平、寝室はどこだ」
「寝室でございますか?この奥ですが…。しかし父上、なにゆえまだ日も高いのに…?」
「いや、なに。おまえに、かように見事な家を建てた褒美をやろうと思うてな」
 そうして関羽は息子の腰を抱くようにして、奥の間へと入って行ったのでした。





 やがてお家を無くした興と索がやってきて、どんなに扉を叩いても、しっぽりお取り込み中のレンガのお家の扉が開かれることはありませんでした。



おしまい


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