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シンデレラ‐灰被り。つまり暖炉の灰掻きなどをする小間使いのことです。彼は本当の名前を平といい小間使いではありませんでしたが、普通は下働きのような者がする仕事を喜んでする平のことを家族は時折からかい半分にシンデレラと呼んでおりました。無論そうまでして働かなくても平の家には使用人たちがいるのですが。 平が灰を被ってまで働くのはなぜって?それは彼の愛する家族たちのためでした。平の今の家族は皆、平とは血が繋がっていません。継父とその息子である二人の弟たちです。皆決して平を蔑ろにしたりせず本当の家族として仲良く暮らしておりましたが、やはりどこか引け目を感じていた平は父と弟たちのために今日もかいがいしく働くのでした。 「兄上~。私の青い帯を知らない?」 「あにうえ、索、おなかすいた…」 「平、平はおらぬか!」 三人の用事すべてに対してつつがなく返事をしていれば時間に羽が生えているようなもの。気付けばもう一日の終わり、という毎日です。それでも平は愛する家族のために献身的に働くことを厭うたことは一度もないのでした。 シンデレラの住む屋敷は小さいながらも良き領主が治める国にありました。領主殿は平民上がりのとても気さくな方です。何より継父とはまさに兄弟の如く苦楽を供にした仲でした。ところで領主には独り息子がおり、彼が年頃を迎えるにあたりお城では花嫁に相応しい娘を探す舞踏会が開かれる運びと相成りました。国中の娘たちが招待状を受け取る中、シンデレラの住むお屋敷にも城からの招待状が届きました。 「興にいさま、索も興にいさまも男の子なのにどうして?」 「うーん、アレだろ、父上と伯父貴の仲ってやつじゃないのか?」 二人の会話を聞いていたシンデレラはにっこり笑って言いました。 「いやいや、国中の姫君たちをエスコートするのに劉封殿一人では務まりきらぬ故、そなた達のような良き若者が選ばれたのであろう。どれ、この兄が二人に一張羅を見繕ってやるから父上と三人で楽しんでくるといい」 「三人で、とは兄上はお出ましにならぬおつもりですか?!」 「うん、そうだな…」 シンデレラは継父譲りのハッキリした目鼻立ちを持つ弟たちの顔を慈しむように見ると言いました。 「私はこの通り美丈夫でもないし舞踏会に相応しいような衣装も持っていない。それにとうが立ちすぎているよ。私は灰でも被っている方が性に合っている」 優しすぎる兄の言葉になんと言えばよいのかわからぬ弟たちは、それでも舞踏会に若者らしいときめきも持っていたため結局勧められるままに出掛けて行きました。 さて、たった独りお屋敷に残ったシンデレラはと言うと。涙が出るほど後悔しているわけではありませんでしたが、ふとした瞬間に感じるわびしさ、物悲しさにやはり気分が落ち込みそうになるのでした。 「父上と興と索は今頃楽しんでいるかな…」 勝手口のレンガの階段に座り込んで物思いに耽っているとそこに現れたるは西方産の足の長い馬に跨がった隣のお屋敷の若殿、馬 孟起殿でした。 「どうした関平。しみったれた顔をして」 彼は忌憚ない喋り方で人の誤解を招くようなところもありましたが、些細なことにはこだわらぬ気持ちの良い人柄です。そして以前から何かとシンデレラのことを気にかけていてくれたのでした。 「何があったのだ。このオレに言ってみろ」 「馬超殿…。お優しいのですね。しかし私はこの通りなんともありませんから」 「そのように浮かぬ顔をしてなんともないことがあるか。どのようなことでも笑ったりはせん。言ってみろ」 「はぁそれでは…」 実は、とシンデレラは話し出しました。お城の舞踏会を羨むわけではないものの、何となく気分が晴れぬこの気持ちについて一生懸命説明しました。決して話し上手でないシンデレラの話を、馬超殿はじっと辛抱強く聞いてやりました。 「なるほどな。オレによい考えがある」 そう言うと馬超殿はシンデレラを急いて自分の屋敷に入らせたのでした。
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