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水攻めの首尾は上々に終わり、関平は勢いに乗って樊城へ進軍していた。
どんな難敵と遭遇しようとも恐れることはない。自分は軍神関羽の子だ。父を助けて乱世を収めるのだ。
父ならば成し遂げるに違いない。
ふと、にわかに戦局が変わり出した。押されているのではないが、なにやら戦列が乱れる。
不審に思っていると、早馬の使者が関平の目の前で止まり、転がるように馬を降りて平伏すると蒼白な顔をして早口で言った。
「ご注進いたします。関将軍が伏兵にあい、先ほど戦死なさいました」
──父上。父上が…?
関平は戦意を喪失し、棒立ちになる。そして無力に背後の木に背を持たせかけた。
「関平様、お気を確かに! 関平様!」
周囲の兵が叫ぶが、なにも聞こえない。なにも考えられない。
それでも涙だけはその知らせを理解して彼の頬を次第にぬらした。
どのくらいそうしていたのだろうか。
戦火は移動し関平は一人取り残されていた。
いつのまにか雨はやみ、日は傾いた。夏場とはいえぬれた衣服に夕風は冷たく吹いたが、こごえるほどの寒さでも今は感じないだろう。
──父上。
衝動的に関平は小柄を抜き、逆手に握って首筋に当てた。
ものを考える力が残っていたらそんなことはできなかっただろう。
あの人なら息子のそんな行動を諌めるだろうと思えば、できはしなかったろう。
しかし関平のただ一人のその人はもういない。制止の声はどこからも聞こえない。
──父上、おそばに参ります。
関平は一思いに小柄を引く。
そして暗転した。
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